中編小説

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中編小説中篇小説(ちゅうへんしょうせつ、英語: novella)は、文学形式の一つ。長編小説短編小説に対して用いられる語であり、短編小説より長く長編小説ほど長くはない作品を指す[1]。日本ではおおよそ原稿用紙100枚以上300枚未満の長さを指し[1]、米国では例えばInternational Association of Professional Writers & Editorsが17,500文字から40,000文字までと定義している[2]。ただし、公式な定義ではなく、『ライター』誌では2021年10月の記事で「約2万から5万文字まで」としている[3]

明確な基準がなく[1]、長編小説や短編小説との境界線は曖昧である。一篇で1冊以上の分量となる場合はおおむね長編小説と呼ばれるが、これもレイアウトや文字サイズ、ページ数によって分量が大幅に変わるため、基準と呼べるほど確かなものではない。例えば村上春樹のデビュー作である『風の歌を聴け』は、分量的には中編であるが、単独で単行本化され、長編小説と扱われることもある。また、中公文庫で単独刊行されている北杜夫『少年』に至っては、むしろ短編と呼んでもおかしくない分量である。通常の字組みで200頁(原稿用紙350枚程度)であれば単独または短編1編を加え、フィルアップして単行本化されるケースが多いため、一つの境界線とも考えうるが、これを超えながら短編4つと組み合わせて単行本化された安東能明『出署せず』は、文庫解説で中篇と称されている。一方で、同作より若干短いが200頁は超えている横溝正史『本陣殺人事件』は、おおむね長編と呼ばれ続けている。

芥川賞は短編のみならず、中編も対象としている[4]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 精選版 日本国語大辞典. “中編小説”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2021年11月5日閲覧。
  2. ^ "Word Count Separates Short Stories from Novelettes and Novellas". International Association of Professional Writers & Editors (英語). 12 November 2018. 2021年11月5日閲覧
  3. ^ Smith, Jack (8 October 2021). "The novella: Stepping stone to success or waste of time?". The Writer (英語). 2021年11月5日閲覧
  4. ^ 塚本香編「MEANING OF THE PRIZE」『Harper's BAZAAR』、ハースト婦人画報社、2019年12月、 231頁。

関連項目[編集]