家族

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19世紀のあるギリシャ人一家(1895年
コンゴの家族(2007年)
両親の50回目の結婚記念日を祝うために2007年9月にスペインの修道院前に集い写真をとった、11人の子供と20人の孫。大家族

家族(かぞく、ドイツ語: Familieフランス語: famille英語: family)とは、婚姻によって結びつけられている夫婦、およびその夫婦と血縁関係のある人々で、ひとつのまとまりを形成した集団のことである。婚姻によって生じた夫婦関係、「産み、産まれる」ことによって生じた親と子という血縁関係、血縁関係などによって直接、間接に繋がっている親族関係、また養子縁組などによって出来た人間関係等々を基礎とした小規模な共同体が、家族である。また、血縁関係や婚姻関係だけではなく、情緒的なつながりが現在の家族の多様性によって最重要視されている。

しかしひとくちに「家族」や「family」と言っても、同居していることを家族の要件に挙げている場合もあれば、そうでない場合(つまり、同居は要件でない場合)もある。

家族の持つ機能には、性的、生殖、扶養、経済的生産、保護、教育、宗教、娯楽、社会的地位の付与などがあるとされる[1]。しかしこれらは社会の変化に伴って、弱体化し、大きく変容している[1]

定義[ソースを編集]

「家族」や「family」といった言葉には、いくつかの意味がある。

以下、辞書類の解説から紹介する。

Oxford Dictionariesでは、英語の「family」に関して、大きく分けて3つの意味を挙げている。

1 ふたとそのたちで、ひとまとまり(ひとつの単位)として一緒に暮らしているものたち
1.1 血縁や結婚によって関係づけられた人々
2 共通の先祖を持つ全ての人々
3 関連性のあるものごと

広辞苑では「家族」の解説文としては、「夫婦の配偶関係や親子・兄弟の血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団」としている。

「Family」と題された像

大辞泉では、「夫婦とその血縁関係者を中心に構成され、共同生活の単位となる集団」としている。

家族の持つ機能[ソースを編集]

家族が持つ機能と変化[1]
内容 社会的アウトソース,
現在の変化
性的機能 結婚制度に基づいて、パートナー内では許容されるとともに、その外側においては性を禁止する秩序機能 同棲、未婚の母、事実婚
生殖機能 子孫を残す 子供を持たないとの選択
扶養機能 老人介護、子供の面倒を見る機能 介護施設、保育園
経済的生産的機能 農業・自営業など、共同単位として経済的生産を行う 会社・工場など外部での経済的生産
保護機能 外敵からメンバーを守る(とりわけ女性、乳幼児、病人) 警察、病院など
教育的機能 子供を育てるとともに、社会に適応した人格を形成する 幼稚園学校など
宗教的機能 宗教、文化、伝統の継承 宗教が軽視される傾向
娯楽的機能 家庭内で娯楽を楽しむ 遊園地、映画など
社会的地位付与機能 親の職業や地位を引き継ぐ 世襲の弱体化

ライフサイクル[ソースを編集]

家族にもライフサイクルがあり、そのステージに応じて達成すべき発達課題がある。

家族のライフサイクル [2]
発達段階 発達課題
1 どの家庭にも属さない、ヤングアダルト
  • 家族から分離して自己を確立する
  • 親密な同年代と仲間関係を持つ
  • 職業上で自己を確立する
2 結婚による家族の誕生
  • 夫婦関係を形成する
  • 互いの実家、友人関係と関係を再構築する
3 幼い子供を持った家族
  • 子供たちのために、夫婦は心理的物理的空間をつくる
  • 親としての役割を務める
  • 祖父母=孫関係を含めた拡大家族を構築する
4 思春期の子供を持った家族
  • 子供らが家庭の内外を自由に出入りすることを受容する
  • 中年夫婦は、夫婦関係、人生職業上の課題を乗り越える
  • 老年世代を配慮する
5 子供たちの脱出と出立
  • 夫婦関係を再構築する
  • 成長した子供たちと父母は、互いに大人同士として付き合う
  • 義理の子供と孫たちを含めた拡大家族を再構築する
  • 父母は、祖父母の心身の障害、死別に対応する
6 人生の晩年を送る家族
  • 社会的・肉体的衰退に対応し、夫婦関係を再構築する
  • 中年世代へ、中心的な役割を譲り渡す
  • 年長者としての知恵と経験を活かし、孫たちに対してよい祖父母になる
  • 配偶者、同胞、同世代の仲間の死別に対応する

家族の類型[ソースを編集]

形態による分類[ソースを編集]

核家族アメリカ(1970年代)

家族はその成員によって、核家族と拡大家族とに分けられる。核家族は夫婦のみ、または未婚のその子供によって構成される家族形態である[3]。夫婦どちらか片方のみと未婚の子供によるものもこれに含まれる。これに対し、それよりも多い成員から構成される家族を拡大家族といい、長男など家系を継ぐ子供の家族に親が同居する直系家族や、両親と複数の子どもの家族が同居する複合家族などが含まれる。またこの区分は一夫一婦制の場合に限られ、複婚が行われる場合は複婚家族という別の区分となる。

この家族形態は時代や文化によって千差万別であり、一つの文化内においてさえ一般的なモデルは存在するもののすべて同じスタイルの家族というわけではない。日本では戦前までは直系家族が基本的な家族モデルとして想定されていたものの、第二次世界大戦後は核家族へと移行した。しかしすべてが核家族というわけでは当然なく、直系家族や大家族の家族も存在する[4]。しかし日本も含め、世界的に社会が発展するに従って家族の規模は縮小する傾向にあり、19世紀にはほとんどの国で1世帯の平均人員は5人前後だったものが、20世紀末には先進国では2.5人前後にまで減少した[5]。一方、発展途上国においては20世紀末においても家族規模の大きな国が多い[5]

出自集団[ソースを編集]

家族は多くの場合、出自を同じくする集団の中に包含されてきた。この出自集団は父母のどちらを重視するかによって、父系制母系制、そして双系制の3つに分かれる。父系制の場合家族は父系集団に属することになり、父方の姓や地位、財産を継承する。これに対し母系制は母方の出自をたどり、相続も母方によるものである[6]。母系制社会では一般に家庭内における父の権力は弱く、母が実権を握っていることが多いが、母系制社会においても女性が社会の実権を握っているわけではないことには注意が必要である。母系制社会では母方の伯父など母方男性の権力が強い。母方女性が社会権力を握る母権制社会は、かつてそのようなものが存在したと想像されたものの実在が確認されず、空想上の概念であると理解されている[7]。父系制・母系制が父母いずれか単独の出自集団に属するのに対し、双系制は家族はどちらの集団にも属しうるので、多くの場合どちらかの集団を選択することとなる[6]

リヒターによる病的な家族[ソースを編集]

ドイツの精神科医ホルスト・エバーハルト・リヒター(de:Horst-Eberhard Richter)はその著『病める家族―家族をめぐる神経症の症例と治療』(佑学社 1976年)において、患者の家族を以下のように類型化した。

  • 劇場家族 - よい家族をお芝居のように演じている家族
  • 要塞家族 - 自分たち以外はすべて敵とみなし、対抗することで絆を確認する家族
  • サナトリウム家族 - 互いに傷を舐めあうような家族

小此木啓吾による家族[ソースを編集]

精神科医の小此木啓吾は家族の心的問題に焦点を当てて次のように類型化している(『家族のない家庭の時代』ちくま文庫 1992年)。

  • コンテナ家族 - 容量が大きく、社会のストレス、不満を持ち帰っても、それを受容し、癒してくれるような家族
  • ホテル家族- みんながそれぞれにお客のつもりで、サービスされることだけを求め、他人のために汗を流そうとしない家族

その他の家族分類概念[ソースを編集]

  • 生殖家族(family of procreation) - 人間が選択(配偶者や子供数の)によって構成した家族
  • 定位家族(family of orientation) - 子供を社会に送り出す側面に注目した家族概念

西欧における家族[ソースを編集]

ノルウェーの家族。1900年

キリスト教の成立とその広まりとともに、教会を介在した結婚や、聖母マリア像に象徴される育児などが教えの中核をなしていった。

「家族のきずなが強調された」、「外で働く男たちとは対照的に主婦がその暮らしの中心をなしていた。」

現在の西欧文化においても、「家族」は市民生活の中でもっとも重要なテーマとなっている。

エドワード・ショーターは中世ヨーロッパには家族愛は存在せず、性愛・母性愛・家族愛は近代になってはじめて家族に持ち込まれたとした[8]。この3つの概念は「性=愛=生殖」の一致を基本とする、いわゆる「近代家族」の理念的支柱となった[9]。「近代家族」は、18世紀後半以降の産業革命の中でヨーロッパにおいて生み出されたと考えられている。これは夫婦を中心とし、子どもに重点を置く核家族制で、生産の側面を持たず、男女の分業を特徴とするものであり、産業革命の進展とともにこのモデルは世界に広がった[10]。また、同時に家族は夫婦・親子の愛によって相互に結ばれるものというイデオロギーが成立した[11]

イタリア
一般に、イタリアの家庭ではマンマ(=「母ちゃん」、母親)が一家の中心に位置しており、一家の最重要人物だ、と考えられている。台所洗濯場はマンマの「」だと考えられており、料理は(たとえ男のほうがしたがったとしても)絶対に男には手出しさせない(男たちは、マンマの城である台所や洗濯場に自分がしゃしゃり出て入ったりしてはいけないものなのだ、と子供のころから母親や父親によって教え込まれ、そう考えている。)。イタリアでは家族は、できるだけ定期的に集い、テーブルを囲み、マンマ自慢の料理(トマト味のパスタニョッキ 等々)を家族で堪能し、「やっぱりマンマの味は世界一だ」と家族全員で褒める。
マンマが絶対で、男たちは(夫も息子たちも)マンマには頭があがらない。たとえば、、一般の人々には恐れられている、こわもてのマフィアの男、警察のことすら恐れない男ですら、マンマのことだけは恐れている、マンマにだけは逆らえない、としばしば言われている。お嫁さんは、マンマの味(調理法、料理の味付け)を教わることで、姑と嫁の関係を結び、次世代のマンマとして息子の家庭で君臨することになる。
フランス
フランス人は、家族の人間関係の中であくまで 夫婦関係が最優先事項と考える傾向がある。たとえ夫婦となり家族となっても、男と女の関係、特に 恋愛めいた男女の心の関係をもつこと、が最重要事項と考えるのである。フランス人は、子供を家族の中心事項にはしない。あくまで夫婦を最重要とし、子供の優先順位はその下である。子供は、赤ちゃんの時点から、夫婦とは別室で寝させ、絶対に夫婦が寝ている部屋では寝させない。子供に対しては、赤ちゃんの時から、独りでいることに慣れてもらうべきで、そのほうが幸せになれる、と考えており、《個》つまり個人としてのしっかりした人格が確立することを望む[注 1]。家族の中での料理の担当者に関しては、18〜19世紀のフランスでは女性がするのが当然視されていたが、近年のフランスでは(イタリアの典型的夫婦とは異なり)夫がキッチンに立って調理に参加したり、また、夫のほうが主導して料理をするような夫婦はそれなりにいる。
類型をめぐる学問的対立
M・アンダーソンは「今日の社会学では、たとえば「家父長制」という概念を説明するために、『些細な事実』を集積してきて類型化してしまいがちである。しかし単一の家族制度などは現実には存在せず、どの地域でも、あるいは歴史上のどの時点でも、家族類型などは存在しない」と説いた[12]
エマニュエル・トッドフレデリック・ル・プレーによって見出された家族類型というものがブリコラージュ(やっつけ仕事)であること認めつつ、完璧に一貫性ある類型体系を先験的に定義するのは不可能でもあれば無用でもあり、ほかの変数との対応関係に置くことができる形で記述するのを可能にする限りにおいて、類型化に意義があるとした[13]

日本[ソースを編集]

明治時代のある家族
日本のある家族(1957年
日本の家族、当時の淡路島民宿1980年
日本の家族(2003年

日本では明治大正期は、夫婦が多くの子をつくり(子沢山)、親たちと同居し、大家族の割合が高かったが、昭和期には夫婦とその子だけで成る核家族、小家族の割合が増えた(つまり、ある夫婦から見て夫や妻の親とは住まない割合、あるいはある夫婦から見て、孫と一緒に暮らさない割合が増えた)。その後、そうした形態の家族の様々な弊害が認識されるようになり、ひとつの家屋の1階2階に分かれて微妙な「近さ」と「距離」を保ちつつ暮らす人々も増えるなど、家族の多様化や 家族の線引きの曖昧化が進んでいる。

家族団欒、一家団欒
広辞苑では「集まってなごやかに楽しむこと」と説明されている。家族で、一緒に食事をしたり、談笑するなどして、なごやかに、楽しくすごすことである。「なごやかに」とあるように、喧嘩をしている状態や険悪な雰囲気では「家族団欒」ではないわけである。たとえば、冬には一緒に炬燵に入り、ひとつのを家族でつつく、などといったイメージがある。
日本では昭和期・平成期に核家族や独身者が増え、ひとりひとりの生活リズムもバラバラになり、孤食化も進み、家族団欒が失われた。正月彼岸には帰省して、ほんの数日間(普段はしていない)「家族団欒」を意識的に作り出そう、などということが行われるようになっている。
家族旅行
戦前から家族旅行は比較的裕福な市民において行われていたが、戦後の高度成長期には裾野が広がり、庶民の家庭においても家族で旅行することが定着した。社団法人日本旅行業協会が公表した統計では、『成人するまでに20回以上、つまり平均して年に1回以上家族旅行に行った人は、「我慢強い」「思いやりがある」「協調性がある」「社交的である」等、周囲とのコミュニケーションや気配りに長けている傾向が強い』という結果となっている[14]

家族に関するメディア報道[ソースを編集]

一部の家族が機能不全状態にあるという意識の広まりと共に、家庭でのドメスティックバイオレンス児童虐待などの事件がマスメディアを賑わすことが日常化している。これらの問題はどの時代にもあり、件数的には現代ではむしろ減少しているが、報道は増加している。近年は家庭内の暴力を人権問題として社会問題ととらえる傾向がある。増加する高齢者人口と在宅での高齢者看護などと共に、家族をめぐる社会問題が報道されている。

家族をめぐるメディア報道においては、現代の離婚件数が昔より増加しているかのような言論や(明治期の離婚は現代の1.5倍の件数であった)、「家族の終焉」といった、歴史的に見て適切ではない言説がなされる場合がある[15][16]。ただし、離婚率は1960年から緩やかに上昇傾向に入り、2000年まで増加し続けた。それでも世界的に見れば日本の離婚率は2006年時点でもかなり低位となっている[17]

フェミニズムの視点から見た日本の家族形態の変化[ソースを編集]

特にフェミニズムにおいては、家父長制という概念を通して家族の歴史がたどられる。リサ・タトル(米国、1952年生)著『フェミニズム事典』(明石書店)では「家族は、家父長制と女性に対する抑圧を存続させる主要な制度である」との説明を採用している。

戦前から終戦までの歴史と変容
戦前の日本の家族は家制度に基盤をおき、地域社会はもとより国家とつながる「イエ」を形作っていた。「家制度」は16世紀に成立し[18]、「家」と「家父長制」の二つを大きな要素としていた。「イエ」という親族集団の一体的結合と継続的発展を重視し、家族の人々を「イエ」に従属する存在とみなした。家父長権の相続(家督相続)、本家・分家などの階層性、それらを対外部的にひとまとまり(ウチ)としてとらえる心性・制度であった。また、家はひとつの経営体でもあり、その維持と継続が最も重視された。このため、長子、主に長男は家にとどまって跡取りとなり配偶者をめとり、先代が死去すると代わって家長となった。「家を継ぐ」という観念がこの時代に発生したことからもわかるとおり、家は跡取りの単独相続であり、また財産は家長ではなく家そのものに属していた[19]。農村部においては、次男や三男など長男以外の男子や女子は、富農層では分家として財産の一部を分与され村内に一家を立てることもあったが、中農層以下のものは独立や婚姻によって村を離れることが多かった[20]。こうした家は地域集団や共同体の基本的な構成単位であり、周囲との密接な関係の上で存続していた[21]。一方離婚は比較的自由であり、この傾向は明治時代に入っても続いた。1883年には人口1000人あたりの普通離婚率が3.39となり、おそらく世界最高の離婚率となっていて、これは1896年の民法制定で離婚が抑制され激減するまで続いた[22]

明治時代に入り、1896年には民法が制定され、そのうちの第4編「親族」と第5編「相続」(いわゆる家族法)によって家制度および戸主権は強化・固定された[23]。ただし、理念的には直系家族が主とされていたものの、次男以下の独立家族が多かったことや父母の寿命が短かったことから、日本では戦前から比較的小規模な核家族が最も一般的な家族形態であり、1920年の時点で過半数の世帯が核家族化していた[24]。戦前の農村では大家族制度が主流であったという認識は(一部の地域を除き)誤りである。一方、大正時代に入ると都市部の新中産階級を中心に、ヨーロッパの「近代家族」の概念が普及した[25]

終戦から1950年代まで
太平洋戦争の終戦を機に民法の改正により家制度は廃止された[26]。経済復興と給与労働者の増加により家庭は家内労働の場という側面が薄まり、家庭の教育的役割が強調されていく。また直系家族に代わり核家族が主な家族理念とされたが、旧来の家族概念も残存した[4]
現代
1950年代以降(高度経済成長期)の家族変動の最も顕著なものは同居親族数が減少したこと、および共同体の力の減退に伴って家族の基盤に変容が生じたこと、の二つの特徴があげられる。多数の人口が農村から都市へ移動し、兄弟の数も減った。戦後社会で育った子供たちはすでに中年から高齢にさしかかり、不況の中で社会から孤立する者が急速に増え無縁社会という言葉まで生まれた。
1980年代以降は、夫婦の共働きも一般化しつつあり、1991年以降男性片働き世帯と共働き世帯の世帯数は拮抗するようになって、1997年以降は共働き世帯が完全に上回るようになった[27]。それによって育児子育てが保育園や学童クラブ、地域の野球やサッカー、スイミングスクールなどのスポーツクラブ学習塾などに一時的に委託されることも増え、性別役割分業の見直しが進みつつある。また、高齢化社会に伴う老親の扶養の問題も深刻化してきた[28]
また、女性の社会進出にともない、女性が旧姓を通称として用いることが多くなってきたほか、選択的夫婦別姓制度導入などを求める声も大きくなって来ている。

日本の家族の現状[ソースを編集]

2010年時点では、日本の家族構成は核家族が56.4%、直系家族等が10.2%、単独世帯が32.4%となっており、1960年代からのデータでは核家族は1980年代まで上昇した後微減傾向、拡大家族は一貫して減少傾向、単独世帯はほぼ一貫して増加傾向にある[29]。ただし単独世帯が1人であるのに対し核家族・直系家族は2名以上で構成されるため、総人口ベースでは2005年データで87%の人が家族と同居していることとなる[30]。また、一つの世帯に属する平均人員数は、調査の開始された1920年から1955年頃までは1世帯に対しほぼ5名で動かなかったものの、その後は急減していき、2005年には1世帯に2.58人とほぼ半減した[31]。地域的に見ると、2005年時点ですべての県において核家族世帯が最も多くなっているものの、都市部では単独世帯もかなりの数を占め、東京都では4割以上が単独世帯である一方、主に日本海側の農村県においては直系家族や大家族の占める割合が比較的高く、山形県では3割を超えている[32]

欧米で近代的な「家族」の崩壊が進んでいる中で、日本ではいまだに近代家族の概念が強固に残っているとされる[33]。一例として、一部先進国においては婚外子の割合が結婚しているカップルの子どもの割合とほぼ同じとなっている国家も存在するが、日本においては婚外子の割合は2008年でわずか2.1%にすぎず、ほとんどが結婚した夫婦による子どもである。しかし、晩婚化や非婚化によって出産数が減少し、深刻な少子化が起こっている[34]。また、一般に欧米の家族では夫婦愛が最も重要であるのに対し、日本の家族愛は母性愛がその柱となっているとされる[35]

動物の家族[ソースを編集]

家族に類する集団を作る動物もある。ある動物が次のような集団を作っている場合、それを家族と呼ぶことがある。

  1. 配偶ペアがある程度以上の期間にわたって維持されること。
  2. この組がそれらの子の世話をある程度以上行うこと。

配偶ペアが長期にわたって維持される例はあるが、それだけを以て家族ということはない。また、単独の親が子育てする例もこれを家族と言わない。もちろん、より文学的表現でそれらをも家族という語を使う例はままある。

上記のような範囲で家族を構成する動物は鳥類に例が多い[36]。いくつかの鳥類では前年の雛が巣に残って子育てを手伝う。これをヘルパーと言う。哺乳類ではタヌキキツネなどいくつかの例がある。類人猿の中では、ゴリラは1匹の雄と複数の雌による一夫多妻制の家族を築いており、父母ともに子どもの面倒を見るが、父親が死亡した場合この家族は崩壊する[37]。ゴリラの家族同士は接触しないように距離を置いており地域集団を形成せず、またより人間に近いチンパンジーは地域集団内の乱婚制で家族を形成しないため、いずれも人類の家族制度および社会制度とは異なっている[38]

節足動物にもかなり例がある。いわゆる社会性昆虫は実のところ一頭ないし一組の生殖個体とその子で構成されており、非常に巨大ながら家族集団である。ただしハチアリの場合、雌が単独で巣作りをするから先の定義から外れる。シロアリは夫婦で巣作りするのでこれは家族扱いできる。他に家族的集団や親子集団を形成するものもあり、それらは社会性昆虫の進化との関連でも注目される。

家族をテーマにした作品[ソースを編集]

映画[ソースを編集]

家族を描いた作品は数多く存在する。その中でも映画史に残る名作や問題作として以下の4作がある。

題名 制作年 内容
東京物語 1953 独立した子供とその親の絆の喪失
ゴッドファーザー 1972 強い父とその家督を継ぐ三男
クレイマー、クレイマー 1979 離婚した男女とその一人息子
アメリカン・ビューティー 1999 娘の友人に恋する無様な父
日本

テレビドラマ[ソースを編集]

日本

漫画[ソースを編集]

多言語との関連[ソースを編集]

江戸時代末期以降、日本人によって欧米語が翻訳・考案された和製熟語(和製漢語)は、明治時代前後から近代語彙の不足していた朝鮮語に多く取り入れられた。和製熟語である「家族」に相当する言葉が無かった朝鮮語に取り入れられ、現在の韓国においても家族(カジョク)と発音され使用されるに至っている。中国語においても同様に、和製熟語は中国語の近代語彙の不足を補った。多くの和製熟語と同様に「家族」も中国語として使用されている。

脚注[ソースを編集]

[脚注の使い方]

注釈[ソースを編集]

  1. ^ フランスでは、日本のように親子が「川の字」で寝る、などという概念はフランス人には、はなから、まったく無い。もしも、フランス人が日本で親子がひと部屋で「川の字」で寝ている、などという実態を聞くような機会があると、非常に驚き、「そんなことをしては絶対にダメだ(ダメよ)」と、真剣に、猛烈に反対する。

出典[ソースを編集]

  1. ^ a b c 吉松和哉; 小泉典章; 川野雅資 『精神看護学I』(6版) ヌーヴェルヒロカワ、2010年、143頁。ISBN 978-4-86174-064-0 
  2. ^ 吉松和哉; 小泉典章; 川野雅資 『精神看護学I』(6版) ヌーヴェルヒロカワ、2010年、149頁。ISBN 978-4-86174-064-0 
  3. ^ 「文化人類学キーワード」p138 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷
  4. ^ a b 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p79-80 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  5. ^ a b 「新版 データで読む家族問題」p17 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  6. ^ a b 「文化人類学キーワード」p140-141 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷
  7. ^ 「文化人類学キーワード」p142-143 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷
  8. ^ 「文化人類学のレッスン フィールドからの出発」p56-57 奥野克巳・花渕馨也共編 学陽書房 2005年4月11日初版発行
  9. ^ 「文化人類学のレッスン フィールドからの出発」p57 奥野克巳・花渕馨也共編 学陽書房 2005年4月11日初版発行
  10. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p63-64 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  11. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p69-71 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  12. ^ M・アンダーソン著『家族の構造・機能・感情』
  13. ^ 家族システムの起源(上) 〔I ユーラシア〕, 藤原書店, 2016, p.108
  14. ^ 「親子の絆と旅行」アンケート結果/社団法人 日本旅行業協会
  15. ^ [1][リンク切れ]
  16. ^ 湯沢雍彦著『明治の結婚 明治の離婚―家庭内ジェンダーの原点』
  17. ^ 「新版 データで読む家族問題」p203 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  18. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p73 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  19. ^ 「百姓たちの江戸時代」p13-14 渡辺尚志 ちくまプリマー新書 2009年6月10日初版第1刷発行
  20. ^ 「一目でわかる江戸時代」p36-37 竹内誠監修 市川寛明編 小学館 2004年5月10日初版第1刷
  21. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p73-75 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  22. ^ 「新版 データで読む家族問題」p202 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  23. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p75-78 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  24. ^ 「新版 データで読む家族問題」p18 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  25. ^ 「純潔の近代 近代家族と親密性の比較社会学」p4-5 デビッド・ノッター 慶應義塾大学出版会 2007年11月10日初版第1刷発行
  26. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p79 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  27. ^ 「新版 データで読む家族問題」p114-115 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  28. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p154 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  29. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p138 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  30. ^ 「新版 データで読む家族問題」p14 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  31. ^ 「新版 データで読む家族問題」p16 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  32. ^ 「新版 データで読む家族問題」p22 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  33. ^ 「純潔の近代 近代家族と親密性の比較社会学」p167-168 デビッド・ノッター 慶應義塾大学出版会 2007年11月10日初版第1刷発行
  34. ^ 「現代人の社会学・入門 グローバル化時代の生活世界」p60-61 西原和久・油井清光編 有斐閣 2010年12月20日初版第1刷発行
  35. ^ 「純潔の近代 近代家族と親密性の比較社会学」p155 デビッド・ノッター 慶應義塾大学出版会 2007年11月10日初版第1刷発行
  36. ^ 「生命の意味 進化生態から見た教養の生物学」p126 桑村哲生 裳華房 2008年3月20日第8版発行
  37. ^ 「生命の意味 進化生態から見た教養の生物学」p146-147 桑村哲生 裳華房 2008年3月20日第8版発行
  38. ^ 「生命の意味 進化生態から見た教養の生物学」p153-154 桑村哲生 裳華房 2008年3月20日第8版発行

関連文献[ソースを編集]

関連項目[ソースを編集]

家族に関連する用語・概念[ソースを編集]

法規、法規上の概念
社会学やジェンダー論などの概念

家族にかかわる出来事[ソースを編集]

家庭経済、収入
子供
老人
年中行事

家族にかかわる問題[ソースを編集]

家族に関連する研究[ソースを編集]

外部リンク[ソースを編集]