調査報道
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調査報道(ちょうさほうどう、英: Investigative journalism)とは、報道のスタイルの一つ。
概要[ソースを編集]
あるテーマ、事件に対し、警察・検察や行政官庁、企業側からの情報によるリーク、広報、プレスリリースなどからだけの情報に頼らず(これを中心情報とする報道は発表報道)、取材する側が主体性と継続性を持って様々なソースから情報を積み上げていくことによって新事実を突き止めていこうとするタイプの報道。端的に言うと、客観的な「裏付け」をとること。
日本の官公庁などに記者クラブがあるため、大手マスコミが発表報道に陥りやすく、調査報道をしようとするフリージャーナリストが取材活動しづらいと指摘されている。
北海道新聞の高田昌幸によれば、一介の個人には出来ない組織や権力者(警察、検察、官庁や大企業、大政治家)が絡む調査報道の目的は以下のことにあるという[1]。
ただし、2については、書かれた相手がアウトローな組織(暴力団、右翼団体、左翼団体、カルト教団)の場合は、「自分たちにデメリットな報道内容を事実だと認めさせる事」が、政府機関や一般組織や大政治家と比較して難しいことが多い。
調査報道は取材による手間とコストがかかる手法でもある。またそうして取材で手間とコストをかけたが取材結果が既存の公開情報と同じで新事実が出てこなかった場合、取材による手間とコストに見合うスクープという利益が得られないことになる。
事例[ソースを編集]
- シーモア・ハーシュによるソンミ村虐殺事件報道
- ウォーターゲート事件
- ボストン・グローブによるカトリック教会の性的虐待事件
- ガーディアンとワシントン・ポスト両紙によるPRISMの存在の暴露
日本[ソースを編集]
- 共同通信など各社の取材により、現職公安警察官が潜入捜査をして事件後に警察の庇護を受けていた事を明らかにした菅生事件
- 立花隆が『文藝春秋』に掲載、時の内閣を退陣に追い込んだ田中金脈問題[4]
- 札幌テレビ放送が“123号通知”の存在を明らかにした、札幌市白石区でのシングルマザー餓死事件と生活保護制度、特に「水際作戦」の問題報道[5]
- 『噂の眞相』による東京高等検察庁検事長(当時)の則定衛の女性問題報道
- 毎日新聞による旧石器捏造事件報道[4]
- 朝日新聞横浜・川崎両支局によるリクルート事件報道
- 新潮社『フォーカス』、テレビ朝日『ザ・スクープ』における桶川ストーカー殺人事件報道
- 北海道新聞における北海道警裏金事件報道
- TBS『スペースJ』における下村健一の松本サリン事件冤罪事件・報道被害事件報道
- 日本テレビ『ACTION 日本を動かすプロジェクト』における足利事件の冤罪キャンペーン報道
- 朝日新聞の大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件報道
- 月刊FACTAによるオリンパス事件報道
- しんぶん赤旗による大手企業の偽装請負問題報道
- 西日本新聞「あなたの特命取材班」によるかんぽ生命保険の不正販売問題報道『徹底調査報道「ひずむ郵政」』[6]
- チューリップテレビによる富山市議会の複数議員が行なった政務活動費私的流用問題報道
- 中日新聞社呼吸器事件取材班による湖東記念病院事件における司法の実態を告発した連載[7][8]
- 週刊東洋経済による山一證券の自主廃業につながった損失補填疑惑報道
- 東洋経済新報社による日本の精神医療の現実をレポートした連載[9]
- Business Insider日本版など複数媒体による新興ベビーシッタープラットフォーム企業・キッズラインの不祥事をめぐる調査報道[10]
- TBSテレビ(news23、報道特集)が明らかにした東京2020オリンピック競技大会(国立競技場会場)におけるスタッフ用給食の大量廃棄問題
インターネット上での調査報道を採用している媒体[ソースを編集]
2018年1月に西日本新聞社が開始した調査報道企画「あなたの特命取材班」の成功を機に新聞社を中心にあなたの特命取材班と同種の調査報道企画を採用している報道機関が増えている。何れの報道機関も読者からのインターネット経由での情報提供を受けて、記者が取材を行い、ニュース化しているのが特徴である[11][12]。
- 2022年5月時点。表中の「JOD」欄に「○」があるものは「あなたの特命取材班」と提携しているメディア(JODパートナーシップ参加媒体)。詳細は、公式サイトのあな特とはを参照。なお、東奥日報のように通常記事閲覧が有料のウェブサイトにおいても、当該記事は基本的に閲覧制限が設定されていない。
- 表中で「(中日新聞、京都新聞)」のようにカッコ書きで媒体名が記載され「JOD参加」欄が「△」の場合、県域紙やローカル局でなく県内を頒布対象とするブロック紙や広域紙がカバーしていることを表す。「-」はその媒体で独自に調査報道を行っているが、JODには非参加。「採用媒体なし」で「×」の場合、県域紙やローカル局では調査報道を行っていない(全国紙やNHKのみフォロー)。
脚注[ソースを編集]
- ^ 調査報道とは何か―日本ジャーナリスト会議の勉強会から 本人ブログ「ニュースの現場で考えること」
- ^ 勿論、取材源の秘匿はジャーナリズムの大原則であり、それに反しない形でテーブルに出すことになる。
- ^ 一説にはジョージ・オーウェルの言葉だとされている
- ^ a b 「調査報道」の社会史 小俣一平、2017年5月20日閲覧。
- ^ 水島宏明「母さんが死んだ ―しあわせ幻想の時代に―」、ひとなる書房
- ^ コーナーページ
- ^ 浅野健一「冤罪逮捕をメディアはどう報じたのか-再審・滋賀湖東記念病院事件の報道検証」『創』第50巻第1号、創出版、2020年1月、 98頁。
- ^ “2019年第19回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」授賞作品”. 石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞. 早稲田大学 (2019年12月20日). 2020年11月11日閲覧。。
- ^ 精神医療を問う 東洋経済オンライン
- ^ 【調査報道】シッター逮捕のキッズライン、レビューに浮上する深刻な疑惑
- ^ “SNSでつながる、取材力でこたえる 西日本新聞の調査報道「あなたの特命取材班」の挑戦”. news HACK by Yahoo!ニュース (2018年4月13日). 2022年4月29日閲覧。
- ^ 日本放送協会 (2020年2月25日). “あなたのニュースで社会が変わる 〜信頼のジャーナリズム〜”. NHK クローズアップ現代. 2022年4月29日閲覧。
- ^ 京阪神エルマガジン社の他に京都新聞社、神戸新聞社、北日本新聞社、山陽新聞社、デイリースポーツ、サンテレビジョン、ラジオ関西が参加。
- ^ a b 本紙はJOD非参加だが「まいどなニュース」を通じて間接的に参加。