バヌアツ
- バヌアツ共和国
- Ripablik blong Vanuatu (ビスラマ語)
Republic of Vanuatu (英語)
République du Vanuatu (フランス語) -
(国旗) (国章) - 国の標語:Long God Yumi Stanap
(ビスラマ語: 神と共に立つ) - 国歌:我ら、我ら、我ら
-
公用語 ビスラマ語、英語、フランス語 首都 ポートビラ 最大の都市 ポートビラ 独立
- 日付英仏共同統治より
1980年7月30日通貨 バツ(VUV) 時間帯 UTC+11 (DST:なし) ISO 3166-1 VU / VUT ccTLD .vu 国際電話番号 678
バヌアツ共和国(バヌアツきょうわこく)、通称バヌアツは、南太平洋のシェパード諸島の火山島上に位置する共和制国家である。西にオーストラリア、北にソロモン諸島、東にフィジー、南にフランス海外領土のニューカレドニアがある。イギリス連邦加盟国。
国名[編集]
正式名称は、
- Ripablik blong Vanuatu (ビスラマ語: リパブリック・ブロン・ヴァヌアトゥ)
- Republic of Vanuatu (英語: リパブリック・オヴ・ヴァヌアートゥー)
- République du Vanuatu (フランス語: レピュブリク・デュ・ヴァヌアトゥ)
日本語の表記は、バヌアツ共和国。通称は、バヌアツ。ヴァヌアツという表記もされる。中国語の漢字表記では「瓦努阿図」と書き、「瓦」と略す。
バヌアツは、メラネシア系の言葉「バヌア(土地)」と「ツ(立つ)」の合成語で「我々の土地」「独立した土地」といった意味がある[3]。
歴史[編集]
バヌアツの島々には、数千年前にオーストロネシア語族の人々が渡来してきて定住し始めたと考えられている。その最古の遺跡は、約4000年前のものだと推定されている。1452年から1453年にかけて、海底火山クワエの大噴火が複数回起こり、世界の歴史に大きな影響を与えた。
バヌアツは元々メラネシア人の居住地であった。ヨーロッパ人で最初にこの島を訪れたのは、ポルトガル人のペドロ・フェルナンデス・デ・キロスで、1606年4月27日にサント島に上陸している。ヨーロッパ人による植民が始まったのは、ジェームズ・クックによる調査が行われた18世紀末以降のことである。1774年、クックがこの地域をニューヘブリディーズと命名した。イギリスとフランスの間で衝突が繰り返された後、1906年に両国は、ニューヘブリディーズ諸島を共同統治領とすることに合意した。
1960年代、バヌアツの人々は自治と独立を要求し始めたが、英語系とフランス語系の島民が対立し、1974年にフランス語系のタンナ島でタンナ共和国として独立を宣言した(フランス軍による島の制圧で終わった)。1975年にはサント島を中心とした島々でナグリアメル連邦として分離独立の宣言も起きた。1980年に入るとバヌアツの独立を求める声が高まったが、タンナ島で再びタフェアン共和国として独立運動が起きた(これはイギリス軍の制圧で分離独立運動は終結した)。8月21日にはエスピリトゥ・サント島のフランス語系住民が独立に反対し分離運動が起き、ベマラナ共和国と名付け分離独立が起きた。
1980年7月30日にイギリス連邦加盟の共和国としてバヌアツが独立、フランスは政情不安を理由に最後まで独立に反対の立場であったが、これにより事実上、イギリス・フランスの共同統治下から独立し、大統領を元首とする「バヌアツ共和国」として出発した。独立した同年にメラネシア社会主義を掲げるバヌア・アク党のウォルター・リニが首相に就任。1991年の社会主義国家の相次ぐ崩壊に伴ってウォルター・リニは党内外から批判が高まり、1991年に解任された。その後、総選挙によりフランス語系の穏健諸党連合のカルロが首相に就任、国家連合党と連立政権を成立させた。2006年7月には環境NGO「地球の友」とシンクタンク「新経済財団」が「地球上で最も幸せな国」に選んだ。
2010年代には中華人民共和国に接近することで多額の投資を引き出すことに成功。これにより首相官邸や大型の会議場、スポーツ施設、港湾などの建設が行われ、インフラの充実が図られた[4]。
政治[編集]
国家元首の大統領は、儀礼的・象徴的役職である。任期5年で、議会の議員と各州議会議長によって構成される大統領選挙会における投票によって次期大統領を決定する。当選には、3分の2以上の得票が必要で、その条件を充たすまで何度も投票を繰り返す。2004年の大統領選挙では、32人が立候補し、4月8日から12日まで4回の投票を行い、ようやく決定した。
行政府の長である首相は、議会が議員選挙直後に議員の中から選出し、大統領が任命する。閣僚は、首相が指名し、議会に責任を負う(議院内閣制)。
議会[編集]
議会は、一院制。議席数は52で、全て民選。任期4年。2016年1月22日に行われた前回総選挙では、バヌア・アク党と穏健政党連合、国土正義党の3党が各6、国民統一党とイアウコ・グループが各4、ナグリアメルとナマンギ・アウテが各3議席を獲得するなどした[5]。
慣習と土地の問題に関しては、部族の首長によって構成される評議会が、議会に助言を与える。
治安・防衛[編集]
バヌアツはバヌアツ警察隊(VPF)と海洋警察隊(PMW)、準軍事組織であるバヌアツ機動隊(VMF)を保有し、全体の規模は約550名である。
地方行政区分[編集]
6つの州に分かれる。
- トルバ州 (Torba) - トーレス諸島とバンクス諸島が所属(人口7,000人, 面積882 km2)
- サンマ州 (Sanma) - エスピリトゥサント島とマロ島などが所属(人口33,000人, 面積4,248 km2)
- ペナマ州 (Penama) - アンバエ島(アオーバ島とも)、マエウォ島、ペンテコスト島などが所属(人口25,000人, 面積1,198 km2)
- マランパ州 (Malampa) - マレクラ島、アンブリム島、そしてアンブリュム島のすぐ南にある小さな島・パーマ島からなっている。(人口32,000人, 面積2,779 km2)
- シェファ州 (Shefa) - シェパード諸島(エピ島とエファテ島の間にある)とエピ島とエファテ島(首都ポートビラが所在)などが所属(人口49,000人, 面積1,455 km2)
- タフェア州 (Tafea) - タンナ島、フツナ島、エロマンガ島、アネイチュム島、アニワ島などが所属(人口27,000人, 面積1,627 km2)
地理[編集]
バヌアツは800kmにわたって北北西から南南東に連なる83の島からなり、それらはニューヘブリディーズ諸島と呼ばれる。そのうち、住民が居住する島は約70である。
最大の島はエスピリトゥサント島(3947km2)。同島のタブウェマサナ山 (1878m) がバヌアツの最高地点ともなっている。最大の町は、エファテ島にある首都ポートビラ(33,900人)、2番目はエスピリトゥ・サント島のルーガンビル(8,500人)。人口は2002年のデータ。
バヌアツの島の約半分は火山島で、険しい山の周りに平地が僅かにある。特にアンブリム島、タンナ島、ロペヴィ島、アンバエ島の火山は活火山として活動が継続している。残りは、サンゴ礁からなる島である。バヌアツの火山は、太平洋プレートがオーストラリアプレートに潜り込むサブダクション帯によるものであり、環太平洋火山帯の一部をなしている。近海ではたびたびマグニチュード7超の強い地震が起きている。
最も南に位置する2つの無人島、マシュー島とハンター島は、フランスの海外領土ニューカレドニアとの間で領有問題を抱えている。
主な島[編集]
- トーレス諸島
- バンクス諸島
- モタ島(シュガーローフ島)
- エスピリトゥサント島 - 最大の島
- マレクラ島
- アンブリム島
- ロペヴィ島(無人島)
- シェパード諸島
- エファテ島 - 首都ポートビラ
- タンナ島
- エロマンガ島
- アネイチュム島
- マシュー島(無人島)
- ハンター島(無人島)
気候[編集]
全域が熱帯雨林気候であり、海洋性気候の特色を持つ。南東貿易風の影響下にあり、5月から10月にかけて気温が低下する。首都ポートヴィラの最高気温は冬季において25度、夏季には29度に達する。年平均降水量は2300mmである。2015年3月13日から14日にかけてサイクロン・パムの直撃による被害を受けた。
経済[編集]
農業は、ヤムイモ、タロイモ、コプラ、ココア、牛肉などの生産が主である。政府による国家開発政策策定の影響で、2003年以降観光業が順調であり、航空便やクルーズ船の増加に伴い観光客数が年々増加している。無形世界遺産の砂絵などの民俗文化、風光明媚な風土を活かしたスキューバダイビング、火山見学などを目的とした観光客が多く、外貨獲得手段の一つとなっている。
- 輸出品目 - コプラ、牛肉、木材、ココア、コーヒー、カバ(kaba , 健康飲料)
- 輸出国(2002年) - インド 32.5%、タイ 22.8%、韓国 10.5%、インドネシア 6.3%、日本 4.9%
- 輸入品目 - 機械機器、食料、燃料
- 輸入国(2002年) - オーストラリア 22.1%、日本 19.2%、ニュージーランド 10.1%、シンガポール 8.1%、フィジー 6.6%、台湾 5%、インド 5%
オフショア金融などサービス業も盛んである。
情報・通信[編集]
バヌアツには国営放送のVBTCがあり、インターネットにおいてはウガンダ共和国のプロバイダを使うことが多い。新聞は売店などでの販売が主流。
交通[編集]
フラッグ・キャリアとしてバヌアツ航空があり、ポートビラ・バウアフィールド空港をハブ空港として国内線・国際線を運用している。日本からの直行便はなく、フィジー経由で約17時間かかる。
国民[編集]
民族[編集]
人種構成は、メラネシア系が98%で、他にフランス系、ベトナム系、中国系、非メラネシア系太平洋諸島民族が住む。
言語[編集]
バヌアツには、3つの公用語(ビスラマ語、英語、フランス語)の他、100以上の地方言語がある。共通語は、ピジン英語のビスラマ語(ビシュラマ語)である。ビスラマ語は英語を基本に、大洋州諸語のポリネシア諸語や南オセアニア諸語とフランス語が混ぜ合わさってできたクレオール語で共通語としての役割を担っている。
国民は普段は自分の出身地の言語を使い、ビスラマ語が普及する以前は島ごとに言語や文化が異なり他の島の人との疎通が困難だったため「砂絵」という絵文字文化が生まれた。これは一筆書きで描かれるという特徴がある。
南太平洋の独立国の中では唯一フランス語が公用語になっており、主に首都ポートビラのあるエファテ島とタンナ島やエスピリトゥサント島で使われている。各家庭が教育では英語系とフランス語系どちらかを選ぶことができる。政治勢力も英語系・仏語系に分かれており、英仏共同統治の名残となっている。政府機関等では英語が主に使われている。
- 大洋州諸語は100以上に及ぶが以下の言語が代表的である。右側に主に使われている地域を示す。
宗教[編集]
宗教は、長老派教会 36.7%、英国国教会 15%、カトリック教会 15%、地域固有の伝統信仰 7.6%、セブンスデー・アドベンチスト 6.2%、キリスト教会 3.8%、その他 15.7%。その他には、ジョン・フラム信仰が含まれる。ジョン・フラム信仰とは、太平洋戦線からアメリカ軍が去った第二次世界大戦後、メラネシアの各地で広まったカーゴ・カルト(積荷信仰)の1つで、ジョン・フラムという白人の聖者が莫大な財宝(積み荷)を持って自分たちの島を訪れるというものである。タンナ島では、毎年2月15日に彼を迎えるための盛大な祭りが行われている。
文化[編集]
バンジージャンプの起源となった成人の儀式『ナゴール』が有名である。
食文化[編集]
著名な料理としては、ラプラプが挙げられる。
世界遺産[編集]
2003年に『バヌアツの砂絵』が世界無形文化遺産に登録された。
スポーツ[編集]
バヌアツ国内ではサッカーが最も人気のスポーツとなっており、1994年にサッカーリーグの「ポートビラ・フットボールリーグ」が創設された。同リーグではタフェアFCがあまりにも圧倒的な強さを誇っており、世界記録となる15連覇を含むリーグ最多16度の優勝に輝いている。サッカーバヌアツ代表はFIFAワールドカップへの出場歴はないものの、OFCネイションズカップにはこれまで9度出場している。
祝祭日[編集]
日付 | 日本語表記 | 現地語表記 | 備考 |
---|---|---|---|
1月1日 | 元日 | New Year's Day | |
2月21日 | ファザー・リニ・ディ | Father Walter Lini Day | リニは、初代首相。 |
3月5日 | 酋長たちの日 | Custom Chiefs Day | |
移動祝祭日 | 聖金曜日 | Good Friday | |
移動祝祭日 | 復活祭の翌日 | Easter Monday | |
移動祝祭日 | キリスト昇天祭 | Ascension Day | |
5月1日 | メーデー | Labor Day | |
7月後半 | こどもの日 | Childrens Day | |
7月30日 | 独立記念日 | Independence Day | |
8月15日 | 聖母被昇天祭 | Assumption Day | |
10月5日 | 憲法記念日 | Constitution Day | |
11月29日 | 祖国統一の日 | National Unity Day | |
12月25日・26日 | クリスマス | Christmas Days |
脚注[編集]
- ^ a b “UNdata”. 国連. 2021年10月11日閲覧。
- ^ a b c d IMF Data and Statistics 2021年10月24日閲覧([1])
- ^ 東京都立図書館 バヌアツ国名の由来
- ^ “中国「一帯一路」“債務のワナ”に揺れる国”. 日テレ24 (2018年11月30日). 2018年11月30日閲覧。
- ^ Vanuatu Daily 2016年10月2日閲覧。
関連項目[編集]
- バヌアツ関係記事の一覧
- 相川梨絵 - 元アナウンサー。現地在住の日本人男性と結婚して2012年に移住し、親善大使を務めている。
外部リンク[編集]
政府
- バヌアツ共和国政府 (英語)
日本政府
- 日本外務省 - バヌアツ (日本語)
その他
- PIC - バヌアツ
- 共同統治領-ニューヘブリデス諸島 - ウェイバックマシン(2003年10月13日アーカイブ分)
- 『バヌアツ』 - コトバンク