女性

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女・女性
各国の女性
パイオニア探査機の金属板(部分)に描かれた女性像

女性(じょせい、: γυναίκα: woman)は、男性と対比されるヒト人間)の性別

生物学的な女性[ソースを編集]

生物学的なとしての女性は、一般的な動物メスに相当する。英語のwomanの語源が、womb(子宮)+manであることからも、生物学的には女性性の根拠は、まず女性外性器および内性器に求められる。出生時に女性外性器の存在が確認されたヒトは、女性であるものと認められる。

現代医学の立場から言えば、外性器だけでなく内性器もまた重要である。女性は、大きな配偶子である卵子を生産し種々のホルモン分泌する卵巣胎児を体内で育てるための子宮といった器官を持っている。

女性の場合、思春期に卵巣が発達し、女性ホルモン分泌が増え、第二次性徴が出現する。乳房の発達が始まる(Thelarche・乳房のタナー段階II)[注釈 1][2]ことで思春期に入るため、この時点で思春期に入った事に気づきやすい[3]。次に、女性器が発達し始め、陰毛腋毛が生え始める。身長の伸びがピークを迎えた後に筋肉に比べて皮下脂肪が急速に増大。これは子供を産むためにそなえているものだが、腰回りがふくよかになる。思春期開始から初経の1年以上前は大人の体型への変化し始めで骨盤がまだ前傾傾向(女児型)のままで子供の体型に近いが、初経を挟む前後1年間に急激に体型が変化し、骨盤が直立傾向(女性成人型)に転換し始め、がまっすぐにが大きくなり始め、初潮の1年後以降に骨盤が直立傾向(女性成人型)となり、がくびれ、大人の体型に近くなる[4][5][6][7]

このような生物学的性差は根本的には、染色体の型に由来する。上記のような解剖学的な意味での女性は、多

くの場合、性染色体としてX性染色体のみをもつ(XX)。発生の段階では、積極的なミューラー管のアポトーシスを起こす因子が存在せず、ウォルフ管から男性生殖器の一部を誘導するホルモンがないために、自然にウォルフ管のアポトーシスが起こり、ミューラー管が発達する。

また2018年にロート製薬が発表した研究成果によると、一定の年齢帯の女性の身体は特有の甘い匂いを放出しているとのことで、そのニオイの正体はココナツなどの香りの構成成分と同じラクトンC10ならびラクトンC11という化合物であり、この匂いを感じると男性は「女性らしさ」「若々しさ」「魅力度」を感じる確率が高くなり、この匂いがあると匂いが無い場合よりもその女性の視覚的な印象すらも良かったと男性は思ってしまう(男性の脳はこの匂いに影響されてというか「惑わされて」、視覚が勘違いをする、実態以上に良いと感じてしまう)と研究結果で明かされている。この甘いニオイの放出量は年齢とともに変化し、10代と20代の女性からは多く放出されており、30代に入ると急激に減少し、35歳には放出量の谷底、グラフで見ると一種の「曲がり角」を迎え、35歳以降は低いままほぼ横ばいである、ということも同時に明かされた[8]

先進国・発展途上国を問わず、データの入手できるほとんどの国家において女性は平均寿命が男性に比べ長い[9]

様々な遺伝的または外的要因により、厳密には当てはまらないケースも存在する(半陰陽参照のこと)。しかしながら、概ね上記に当てはまれば通常その人は、女性と見なされる。そのボーダーライン上の判定は、非常に難しく多分に個別的であるが、染色体型はその判定に大きな役割を果たす。

性染色体がXY型またはXO型で発現が女性である実例はあるが、その多くは本人も周囲も女性として受けとめられている。前者は、例えばY性染色体上の因子によって作られるアンドロゲンの受容体が機能しないアンドロゲン不応症や、男性ホルモンの分泌障害である副腎性器症候群などであり、後者はいわゆるターナー症候群である。

稀に、生物学的性別と一致しない<男性>としての性同一性を持ち(性同一性障害)、性ホルモン剤の投与や性別適合手術などを施術し女性に似た外見を持たせ、法的な男性または無表記から戸籍の性別を女性に変更したものもいる。日本では2003年に性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が成立し2004年に施行されて、性同一性障害者のうち特定の要件を満たす者は家庭裁判所の審判により法令上の性別を変更することが可能となった[10]

文化と社会[ソースを編集]

生物学的な性差のほか、社会的・文化的に作られる性差(ジェンダー)によっても女性と男性は区分される[11]。男性と女性の果たす役割はどの文化においても異なるものとされてきたが、その性差の中身は各文化によって千差万別であり、また必ずしも対極をなすものでもなかった[12]。一方で、女性が社会の主導的な立場に立つことは、特殊な場合を除いてどの社会においてもほとんど存在しなかった。社会はたいていの場合家族の集合によるが、父母のどちらを重視するかによって、父系制母系制、そして双系制の3つに分かれていた。父系制の場合父の権力が一般に強いのに対し、母系制社会では一般に家庭内における父の権力は弱く、母が実権を握っていることが多いが、母系制社会においても女性が社会の実権を握っているわけではなく、母方の伯父など母方男性の権力が強かった。母方女性が社会権力を握る母権制社会は、かつてそのようなものが存在したと想像されたものの実在が確認されず、空想上の概念であると理解されている[13]。女性は社会的に不利な条件下に置かれることが多く、この改善を求めて18世紀末以降、女性の権利拡大や男女同権を求めるフェミニズムが徐々に勢力を拡大した。初期フェミニズムの重要な目標は女性参政権の獲得であり、1893年ニュージーランドにおいて世界初の女性参政権が承認され[14](ただし、被選挙権は1919年から)、これを皮切りに世界各国で女性参政権が認められるようになった。1979年には国際連合女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約が採択された。日本では1972年に勤労婦人福祉法が成立し、さらに1985年にはこれを改正して「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(男女雇用機会均等法)が成立した[15]。1999年には男女共同参画社会基本法が施行された[16]

上記のような改善は見られるものの、未だに女性が男性に比して不利な条件下に置かれることは多い。一例として、世界全体での女性の非識字率は男性の非識字率よりもはるかに高く、2000年には男性の非識字者が14.8%だったのに対し、女性の非識字者は25.8%にのぼっていた[17]。また、列国議会同盟の調査による各国下院の2019年度男女議員比率において、女性議員の割合が50%を超える国家は192カ国中ルワンダキューバボリビアの3カ国しか存在しない[18]

女性記号[ソースを編集]

の記号は、惑星としては金星を表わし、ローマ神話ウェヌス(ヴィーナス)、ギリシア神話ではアプロディーテーを表わすが、生物学では女性の性を表わすための記号となっている。[19][20][21]錬金術においては、この記号はを表わし、女性性と関連していた[21]

脚注[ソースを編集]

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注釈[ソースを編集]

  1. ^ 思春期前の間に「思春期前乳房隆起」が発症する場合がある(ほとんどが2歳以下で発症)[1]

出典[ソースを編集]

  1. ^ 妹尾小児科・早発乳房
  2. ^ お母さんの基礎知識(思春期・男の子編)(もっと詳しく…)-神奈川県ホームページ
  3. ^ 「思春期早発症」とは(武田薬品工業)
  4. ^ バストと初経のヒミツの関係
  5. ^ 『初経』をキーにした現代ティーンの成長と体型変化について
  6. ^ パンツサイズ(ショーツサイズ)のはかり方|小学生・中学生女の子下着の悩み解決|ガールズばでなび
  7. ^ 思春期の発現・大山建司
  8. ^ 女性の「若い頃のニオイ」を解明!「若い頃の甘いニオイ」の正体は「ラクトンC10/ラクトンC11」 2018年2月14日 ロート製薬
  9. ^ https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life10/03.html 「平均寿命の国際比較」日本国厚生労働省 2021年1月17日閲覧
  10. ^ https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=415AC1000000111 「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」e-Gov法令検索 2021年1月17日閲覧
  11. ^ https://japan.unwomen.org/ja/news-and-events/news/2018/9/definition-gender 「ジェンダーとは?」UN Women 日本事務所 2018年9月21日 2020年1月17日閲覧
  12. ^ 「文化人類学キーワード」p62-63 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷
  13. ^ 「文化人類学キーワード」p142-143 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷
  14. ^ 「オセアニアを知る事典」平凡社 p206 1990年8月21日初版第1刷
  15. ^ https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/15d.pdf 「Ⅲ 男女雇用機会均等法成立 30 年を迎えて - 厚生労働省」p69 2020年1月17日閲覧
  16. ^ 「フェミニストたちの政治史 参政権、リブ、平等法」p204 大嶽秀夫 東京大学出版会 2017年2月28日初版
  17. ^ 「国際教育協力を志す人のために 平和・共生の構築へ」p39 千葉杲弘監修 寺尾明人・永田佳之編 学文社 2004年10月10日第1版第1刷
  18. ^ http://archive.ipu.org/wmn-e/classif.htm 「Women in parliament」列国議会同盟 2019年2月 2021年1月17日閲覧
  19. ^ Fadu, Jose A., ed (2014). Encyclopedia of Theory & Practice in Psychotherapy & Counseling. LuLu Press. p. 337. ISBN 978-1312078369 
  20. ^ Stearn, William T. (May 1962). “The Origin of the Male and Female Symbols of Biology”. Taxon 11 (4): 109–113. doi:10.2307/1217734. ISSN 0040-0262. JSTOR 1217734. https://iapt-taxon.org/historic/Congress/IBC_1964/male_fem.pdf 2019年7月19日閲覧。. 
  21. ^ a b Schott, GD (December 2005). “Sex symbols ancient and modern: their origins and iconography on the pedigree”. The BMJ 331 (7531): 1509–10. doi:10.1136/bmj.331.7531.1509. ISSN 0959-8138. PMC 1322246. PMID 16373733. https://www.bmj.com/content/bmj/331/7531/1509.full.pdf 2019年7月19日閲覧。. 

関連項目[ソースを編集]

外部リンク[ソースを編集]